インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜=ネット上の情報検証まとめ管理人)
(1)「国会議員・公務員の給与は国民の平均所得参考に増額」
日付
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9/30 |
発信者
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きっこ(ブロガー) |
媒体
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拡散数
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2000RT | |
内容
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「国会議員を始めとした公務員の給与は国民の平均所得などを参考にして増額されましたが、生活保護世帯の給付金は国民の平均所得などを参考にして明日から減額されます。同じデータを参考にしているのに、一方は『増額』で一方は『減額』、不思議ですね。」とする投稿。 |
【検証】増額の事実無し 基準も平均所得ではない
国会議員の給与(歳費)は、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、1年間2割削減されることが決定している。国家公務員の給与はツイート時点で発表されておらず、どちらも「増額された」というのは誤りだ。国家公務員のボーナスについては、給与に先駆けて10月7日に人事院が引き下げを勧告している。
さらに、「国民の平均所得などを参考にして」という部分も正確でない。まず、国家公務員の給与は、民間企業の給与水準と均衡させることを基本とし、格差があれば人事院が国会と内閣に是正を勧告する仕組み。従業員50人以上の民間企業を対象に役職・勤務地・年齢・学歴の条件が同じ層の人同士が比較されるため、単純に「国民の平均所得」というわけではない(参考)。
国会議員の場合、国会法第35条に「議員は、一般職の国家公務員の最高の給与額(地域手当等の手当を除く。)より少なくない歳費を受ける」とあるように、ある程度国家公務員の給与に影響されるが、直接的には歳費法にて金額が定められている。
また、10月1日以降の生活保護費の引き下げの根拠に使われたのは消費支出のデータであり、これも「国民の平均所得」ではない。詳細はBuzzFeedによる検証記事を参照。
(2)「和歌山市クラファン 動物のために使われた形跡がない」
日付
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9/25 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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3.2万RT | |
内容
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「和歌山市議会がクッソ面白い 2年前に野良猫等の保護のためにクラウドファンディングやって二千万円以上集まる ↓ その後動物のために使われた形跡がない ↓ 施設費や広報費、車購入に使い、その分の予算は寄附金で賄えるからと削ったことが発覚 ↓ 議員激おこ」とする投稿。 | ||
引用
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※アカウント名等モザイク処理は筆者による(以下同様) |
【検証】追及された使途は一部 車購入も言及無し
同様に「動物に使われた形跡が無い」とする投稿は他にも複数存在し、それらの中にも5900~1万RTを獲得しているものがある。しかし、この説明は実際に問題になり追及された内容とは異なっている。
和歌山市が犬猫の不妊去勢手術などの名目で費用を募ったクラウドファンディングについては、9月24日の市議会で追及され、ネット上でも大きな話題となった(動画)。議会では芝本和己市議が担当局からの資料を基に、集まった資金の一部が市の当初予算に充当され、「印刷製本費」など本来の目的と異なる名目で使われていると指摘した(参考)。
この資料は結局公開はされていないが、ここで芝本市議が言及したのはあくまで特定のいくつかの使途についてのみであり、「動物のために使われた形跡がない」という指摘はしていない。
投稿で「車購入に使い」とあるのも、議会の内容とは異なる。芝本市議は「自動車保険料」や「自動車借上料」などの使途については言及しているが、「購入費」の話は出てきていない。
なお、この投稿より後の9月28日、和歌山市は議会での説明を大幅に修正。既に全額使われたとしていた寄付金について、約半額が残っていると訂正した。使った分については、猫砂などの消耗品費、ワクチンなどの医療費、手術用の備品購入費、動物用麻酔機の委託料などで、目的外使用は認められなかったとされている(参考1、2)。
(3)「砲弾を投げて運んで爆発(動画)」
日付
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9/29 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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1300RT | |
内容
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海外ユーザーによる動画を引用し、「榴弾砲の砲弾を投げ捨てるように運んで爆発」などとする投稿。 | ||
引用
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【検証】爆発は別の動画のシーン
動画では、砲弾のようなものを投げて運ぶ様子の後に爆発の映像が続いているが、この爆発シーンは無関係の別の動画(武装組織ISへの砲撃とされる動画)と一致する。
前半の映像の出所は不明。投げられている物が火薬の入った実弾なのか、あるいは発射済みの薬莢のようなものなのかは定かではない。
(4)「雷の一種(動画)」(再掲)
日付
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10/4 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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2.1万RT | |
内容
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光の玉のようなものが線路を横切る様子を捉えたかのような動画とともに、「雷の一種らしい」などとする投稿。 | ||
引用
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【検証】動画はCGか 1月にも拡散
これは1月に拡散されこの連載でも取り上げたのと同じ動画(それぞれ別のTikTokユーザーにより転載されたもの)で、元の投稿者と思われる人物がCG映像と明記している。詳しくは下記記事の(2)を参照。
その他
FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。
また過去のまとめでも、新型コロナウイルス関連の様々な誤情報についても検証を紹介している。
(この記事はInFact(運営:NPOニュースのタネ)からの転載です。過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年10月14日の予定です)
大船 怜(Ofuna Rei)
NPOメディア「InFact(運営:ニュースのタネ)」コレスポンデント
1986年千葉県出身。2011年3月東日本大震災をきっかけにネットの誤情報等の検証・注意喚起を行うTwitterアカウントを開設。現在派遣社員として一般企業に勤めながら「ネット上の情報検証まとめ」(@jishin_dema)を運営している。大船怜はペンネーム。