理事長挨拶


 

 ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)は2017年6月に任意団体として設立されました。2018年1月に、特定非営利活動法人として東京都の認証を受けました。
 FIJは、日本におけるファクトチェックを推進・普及するためのプラットフォーム団体です。ファクトチェックをおこなう組織や個人をサポートし、ファクトチェックの担い手を増やし、育てていきます。

なぜファクトチェックを推進するのか

 なぜ私たちはFIJが必要だと考えたのでしょうか。
 背景には、インターネットの普及による、ニュース・情報環境の大きな変化があります。2016年のアメリカ大統領選挙では、「ローマ法王がトランプ候補の支持を表明」などの「フェイクニュース」が多く共有され、拡散したことはご存じだと思います。「フェイクニュース」や真偽不明の情報がSNSを通じて急速に拡散する時代になり、市民が健全な判断をしにくくなる状況が生まれています。
 米国や欧州、そしてアジア諸国などでは、そうした情報環境の変化に対応して、ファクトチェックの取り組みが盛んになっています。しかし、日本はかなり遅れているのが実情です。
 「日本におけるファクトチェックの推進が重要だ」。その点で考えが一致したジャーナリストや研究者、IT企業がFIJ設立に動きました。
 ファクトチェックの推進は、以下の3点に資すると考えています。
 ①誤報・虚報の拡散防止
 ②ジャーナリズムの信頼性向上
 ③言論の自由の基盤強化

ファクトチェックは「事実確認」よりも「真偽検証」

 ファクトチェックとは「真偽の不確かな情報や言説を検証し、事実に基づいているかどうか、正確なのかどうか、その調査結果を明らかにする取り組み」といえます。
 これまでも、新聞・テレビなどのマスメディアは正確性を重視し、校閲というセクションで、事実かどうかを確認する作業をしてきました。
 例えば、時の首相が「消費税の2%引き上げにより5兆円強の税収になる」と発言したとします。従来は、首相がこのことを発言したかどうかをチェックし、発言していればOKとしてきました。これは「事実確認」といえるものです。しかし、消費税に関する首相の発言内容は正しいのでしょうか。その発言内容の真偽を検証する必要がでてきます。これを「真偽検証」と呼びます。
 ファクトチェック(Fact Check)は、日本語では「事実確認」ではなく、「真偽検証」と呼ぶのが適切だと私たちは考えています。ファクトチェックは、市民の信頼に応えるための新しいジャーナリズムのスタイルともいえます。

誤情報や偽情報に惑わされにくい社会を

 FIJは、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)が公開しているファクトチェックの原則に基づいたファクトチェックのガイドラインを作成し、公表しています。より良質で信頼されるファクトチェック記事を作成するため、このガイドラインを広く推奨しています。また、ファクトチェックの対象候補となりそうな言説を、AI(人工知能)を活用して自動的に収集して提供できる支援システムを開発しています。
 何よりも重要なのは、ファクトチェックの推進に賛同していただける組織や個人、さらにファクトチェックに取り組むメディアの数が増えていくことです。FIJのガイドラインを活用してファクトチェックに取り組むメディアを募集しています。
 FIJとしては、より多くのメディアや個人が参加するファクトチェック・ネットワークの構築を目指しています。それにより、市民が、誤情報や偽情報に惑わされにくい社会の構築に向けて貢献したいと考えております。
 ご支援とご協力を、どうぞよろしくお願い申し上げます。