《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.38)【大船怜】


インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人)


(1)「反レイシズム活動家がピラミッド破壊主張」

日付
6/14
発信者
山口貴士(弁護士)
媒体
Twitter
拡散数
3000RT
内容
「イギリスの反レイシズムの活動家が、ピラミッドは奴隷労働により建築されたものだから(考古学の通説に反する見解)、ピラミッドを破壊すべきと主張」などとする投稿(削除済み、キャッシュ)。
引用

【検証】そうした主張が実在したかは不明

大手まとめサイト「保守速報」のツイートが1500RTされるなど、同様の言説は広く拡散されている。

この言説の出所はエジプトのオンライン英字紙「Egypt Independent」の記事。17世紀の奴隷商人の銅像が7日に引き倒されたイギリスで、反人種差別を唱える抗議者たちがエジプト・ギザのピラミッド破壊も主張していると、米TV局CNNが報じたとする内容だ。

しかし、実際はCNNがそのような報道をしたという形跡は無い。他のメディアにも同様の報道は無く、誰が、あるいはどの団体が「ピラミッド破壊」を主張したのか具体的には不明である。

ロイター通信の検証記事によれば、「ピラミッドを破壊すべき」という言及はSNS上でいくつか見られるものの、いずれも皮肉やジョークの類で、本気の主張ではないようである。


(2)「PCR検査は普通の風邪も検出」

日付
4/16
発信者
武田邦彦(工学者)
媒体
Youtube
拡散数
7.5万回再生
内容
「PCR検査というのは武漢風邪(※筆者注:新型コロナウイルス感染症のこと)も検出するし、普通の風邪も検出すると。両方とも陽性となると。だからPCRが陽性だといって武漢風邪とは限りませんよって。」などとする動画。

【検証】RNA配列が異なり判別可能

「普通の風邪」の中には確かに、新型コロナウイルス感染症と同じくコロナウイルスの一種を原因とするものがある。しかし、PCR検査はウイルスの遺伝子情報(RNA配列)に基づいて行われるもので、新型コロナウイルスのRNA配列は既に解析・公開されている。他のコロナウイルスとはRNAの配列が異なり、混同されることは無い。

詳細はインファクトの別稿記事を参照。


(3)「河井案里氏と安倍首相『一連托生』(画像)」

日付
6/18
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
1万RT
内容
公職選挙法違反容疑で逮捕された参院議員の河井案里氏が、安倍晋三首相とともに「一連托生」と書かれた紙を掲げているように見える画像の投稿。
引用

※アカウント名等モザイク処理は筆者による(以下同様)

【検証】画像は加工されたもの

この画像は、2019年6月に河井案里氏が自身のFacebookに投稿した写真を加工したもの。「一連托生」(「一蓮托生」の誤りと思われる)となっていた部分は実際には「祈必勝」と書かれている。

「一連托生」の文字の背景は不自然に白く塗りつぶされているうえ、文字は手書きではなくコンピューターのフォントと見られる。


(4)「吉村知事、ワクチンを『年末までに20-30万人単位に投与』表明」

日付
6/18
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
1.5万RT
内容
THE PAGEの記事を引用し、「吉村知事、今までヒトに使われたことのない DNA ワクチンを動物実験しかしていないのに年末までに20-30万人単位に投与するって、ワクチンの信頼性を根本から揺らがせかねないとんでもない蛮行だと思う。」などとする投稿。

【検証】実際は「10-20万人単位を製造」 投与は来年

投稿者が参照しているTHE PAGEの記事は、大阪府の吉村洋文知事が17日に行った記者会見の内容を報じたものだが、この中に「年末までに20-30万人単位に投与」といった記述は存在しない。実際には以下のように説明されている(下線筆者)。

 吉村知事の説明によると、ワクチン開発は3月に着手しすでに完成。4月に連携協定を進め動物実験を行い、安全性を確認したため今月末に市大の医学部付属病院の医療従事者に投与をするという。
そして安全性を確認した上、10月にはこれを数百名程度の規模に対象を拡大し、今年中には10万から20万の単位での製造が可能になるとしている。
ただ、これは現実に一般のワクチンとして投与するには国の認可が必要なため、認可を得るのは来年の春から秋にかけてになるため「その時期の実用化を目指す」との見通しをも示した。

つまり、年末までの実現を目指すのはワクチンの「製造」であって「投与」ではないうえ、その数も異なっている。実際の投与は「来年の春から秋」、それも治験と国の認可の後であって、「今までヒトに使われたことのない DNA ワクチンを動物実験しかしていないのに」投与するわけではない。

THE PAGEが公開している会見のノーカット映像からも、この事は確認できる。


(5)「中国国境に集まったインドの民衆(動画)」

日付
6/20
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
1.4万RT
内容
急斜面を無数の人が駆け降りる動画とともに、「中国共産党に怒って国境に集まったインドの民衆。」などとする投稿(削除済み)。
引用

【検証】中印の衝突ではなく、ミャンマーで撮影された動画か

投稿の記述はあたかも中印国境地帯で6月16日に起きた両軍の衝突と関連しているかのような印象を与えるが、動画はそれよりも前に存在している。

確認できる最も古いものでは、今年3月には左右が反転した同じ動画がFacebook上に投稿されている。TikTokのクレジットがあることから、これ自体他所からの転載であると考えられ、動画の正確な出所は不明だ。

手前にショベルカーが見える事から、動画は何らかの鉱物の採掘現場を映したものと思われる。ミャンマーのカチン州のヒスイ鉱山では、動画と同様、人々がヒスイを手に入れるために先を争って斜面に群がる様子が撮影されている。ミャンマーではこのようなヒスイ採掘現場での死亡事故が多発し、社会問題になっている。


(6)「サメを襲いながら蛇を見る犬と写り込むカピバラ(画像)」

日付
6/22
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
5.6万RT
内容
「サメをビーチで襲いながら蛇の交尾を見てる犬を撮ろうとしたら写り込んできた主張の激しいカピバラの画像がこちら」とする、画像付きの投稿。
引用

【検証】コラージュした画像

この画像は「サメを食べる犬(ディンゴ)」「交尾する蛇」「カピバラ」の3つの別々の画像をコラージュしたもの。元々は「サメと犬」と「蛇」を合成した画像が先に作られ、これが話題になった事から、更に様々な要素を追加するネタの流れができたようである。当初の2つの画像は単純に上下に接続しただけで境界が直線的だったが、後に作られた様々なコラージュ画像ではより自然に見えるように修正されている。

詳しくはAFP通信BuzzFeedを参照。


その他

FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。

また過去のまとめでも、新型コロナウイルス関連の様々な誤情報についても検証を紹介している。

 

※この記事の調査には、FIJのリサーチャーである八木風香氏が協力した。

(この記事はINFACT(運営:NPOニュースのタネ)からの転載です。過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年7月1日の予定です)

 

著者紹介

大船 怜(Ofuna Rei)

NPOメディア「INFACT(運営:ニュースのタネ)」編集委員
1986年千葉県出身。2011年3月東日本大震災をきっかけにネットの誤情報等の検証・注意喚起を行うTwitterアカウントを開設。現在派遣社員として一般企業に勤めながら「ネット上の情報検証まとめ」(@jishin_dema)を運営している。大船怜はペンネーム。