インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜=ネット上の情報検証まとめ管理人)
(1)「マスクの有無で感染リスク〇%(画像)」
日付
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7/19 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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9.6万RT | |
内容
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飛沫を飛ばす人と相手がそれぞれマスクをしている場合としていない場合の「RISK OF TRANSMISSION(感染リスク)」をパーセンテージで表示し、双方がマスクをして「6FT(6フィート)」離れた場合のリスクを「0%」とする画像。 | ||
引用
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※アカウント名等モザイク処理は筆者による(以下同様) |
【検証】数字の根拠は不明
同じ画像を和訳したものは7月22日放送のTBSの番組「グッとラック!」でも紹介され、内容の信憑性について特に論じられることのないまま、専門家らが「分かりやすい」などと肯定的にコメントしている(録画確認済み)。
NPO法人「食の安全と安心を科学する会(SFSS)」はこの画像について検証。画像は元々インドのNPOがFacebook上で投稿したもののようだが、数値の根拠となるデータは見つからず、また感染リスクはマスクの種類などの条件によって変わること、距離を取ったとしてもリスクが「0%」になることは統計学上考えられないことなどを指摘している。
この画像と似た内容で数値など一部が異なるバリエーションも、世界各地で拡散されている。これらはロイター通信やPolitiFactが検証し、同じく数字の根拠となるデータは存在しないと結論付けられている。
ただし、いずれの検証においても、マスクの着用やソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保が感染予防に効果があるという基本的な主張は(効果の程度についてそれぞれの論調に差はあるものの)正しいとされている。
(2)「岡江久美子さん チェーンスモーカーだった」
日付
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4/25 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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1.7万RT | |
内容
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新型コロナウイルス感染症のため4月23日に亡くなった女優の岡江久美子さんについて、「岡江久美子さんの件、放射線治療を2月までしてたことが重症化した原因て伝えたけど、喫煙歴とかチェーンスモーカーだったこととかそっちをちゃんと伝えないと、誤解をうむことになる。」などとする投稿。 |
【検証】根拠不明 娘らが否定
言語社会学者の寺沢拓敬氏の分析によれば、岡江さんが喫煙者だったとする情報は、岡江さんの亡くなった4月23日以前にはほとんど見つからず、逝去後になって根拠不明のまま突如拡散された話だという。
岡江さんの娘で女優の大和田美帆さんは8月4日、Twitterで「母はヘビースモーカーどころか、喫煙者じゃなかったのになぁ。。」などと投稿。友人でタレントの山田邦子さんも、4月23日のブログ投稿で岡江さんについて「タバコも吸ってなかったって。煙を吸わないように気をつけてたって。」と述べている。
(3)「すごい数の閉店店舗 (横浜)市長答弁の結果」
日付
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8/3 |
発信者
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古谷靖彦(横浜市議) |
媒体
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拡散数
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5000RT | |
内容
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「すごい数の閉店店舗。 横浜駅に直結している相鉄ジョイナスで、7月末に貼られていたお知らせ。 議会の中で『給付』を求めましたが、林文子市長は『融資で』と答弁した結果が、これではないのか(怒)」とする画像付きの投稿(削除済み、キャッシュ)。 | ||
引用
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【検証】店舗リニューアルの影響か
画像は横浜市にある相模鉄道横浜駅の駅ビル「相鉄ジョイナス」に掲示されていたお知らせとされるもので、ビルに入居していた多数の店舗が閉店あるいは移転・休業となったことを伝えるものである。古谷氏はこれらの閉店について、議会で事業者への給付金支援を求められた林文子横浜市長が「融資で」と答弁した結果ではないかと主張した。
しかし、相鉄ジョイナスは現在地下食品フロアの段階的リニューアルが行われており、隣接する高島屋エリアの増床などから店舗が大きく入れ替わっている最中だ(参照)。リニューアルの発表は2018年12月。同11月には新規店舗がオープンし始めていて、完了は2021年春を予定している。新型コロナウイルス感染拡大の影響で計画に何らかの影響があった可能性や、リニューアルと無関係に閉店した店舗があった可能性は否定できないが、多くはこのリニューアルに合わせた閉店と考えるのが妥当だろう。
古谷氏はその後「この場合はリニューアルに起因するものが多くコロナの影響は直接的な関係がないものだと思われます。訂正してお詫びします。」などとして、投稿を訂正・削除している。
なお、古谷氏が言及していた林市長の答弁とは、5月11日市議会での「3年間実質無利子となる新たな融資メニューの創設」(動画、文字起こし)などのことと思われる。
(4)「夜の町クラスターの正体(動画)」
日付
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7/26 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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2000RT | |
内容
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政権への抗議デモの映像とともに、「ピコーン!私… #小池百合子 都知事が言ってる #夜の町 クラスターの正体わかっちゃいましたw」とする投稿。 | ||
引用
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【検証】新型コロナ確認前の動画
この動画は別のユーザーにも「これ感染不明経路の一つじゃね?」などのコメントとともに転載され、約2700RTと拡散されている。
しかし、これと同じ動画は2019年11月12日のTwitter投稿で存在が確認できることから、同日に行われた安倍政権への抗議デモの様子と考えられる。中国・武漢で世界初の新型コロナウイルス感染者が確認されたのは2019年12月、日本国内での初確認はその翌月であり、11月のデモが感染拡大と関連しているとは考えにくい。
BuzzFeedによる検証記事も参照。
その他
FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。
また過去のまとめでも、新型コロナウイルス関連の様々な誤情報についても検証を紹介している。
(この記事はINFACT(運営:NPOニュースのタネ)からの転載です。過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年8月12日の予定です)
大船 怜(Ofuna Rei)
NPOメディア「INFACT(運営:ニュースのタネ)」編集委員
1986年千葉県出身。2011年3月東日本大震災をきっかけにネットの誤情報等の検証・注意喚起を行うTwitterアカウントを開設。現在派遣社員として一般企業に勤めながら「ネット上の情報検証まとめ」(@jishin_dema)を運営している。大船怜はペンネーム。