インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜=ネット上の情報検証まとめ管理人)
(1)「TikTokが他アプリで入力中のテキストを逐一読み取っている」
日付
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6/26 |
発信者
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INTERNET Watch(ネットメディア) |
媒体
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Web記事 |
拡散数
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不明 |
内容
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「iOS 14でバッチリ可視化、TikTokが『他アプリで入力中のテキスト』を逐一読み取る様子」と題し、「ビデオアプリ『TikTok』が、他のアプリで入力中のテキストをほぼリアルタイムで逐一読み取っている様子を可視化したムービーが、海外で大きな波紋を呼んでいる。」などとした記事(訂正済、キャッシュ)。 |
【検証】記事は訂正 実際はTikTok起動中のクリップボード読み取り
記事では、絵文字の専門家として知られるJeremy Burge氏が自らのTwitterアカウントに投稿した動画を参照。テキスト入力時に「TikTok pasted from Instagram」というメッセージが何度も表示される様子から、「TikTokをインストールした状態でInstagramを起動し、テキストを入力すると、1~3ストロークごとにそれらのデータをTikTokが読み取っていることを通知するメッセージが表示される」「起動していないTikTokがデータを読み取っていることが可視化された」などと説明していた。
しかし、実際には動画で映っているテキスト入力画面はInstagramではなく、TikTokのものである。上記のメッセージは、Instagram使用時にクリップボードにコピーした情報が、TikTok使用時に読み取られているという事を表すもので、「他のアプリ(=Instagram)で入力中のテキスト」を「起動していないTikTokが」読み取っているわけではない。
26日、INTERNET Watchは記事を訂正。タイトルや本文から「他アプリで入力中のテキスト」「起動していないTikTok」などといった文言が削除され、動画の説明は「ビデオアプリ『TikTok』が、コメント入力時、ほぼリアルタイムでクリップボードを読み取っている様子を可視化したムービー」となるなど、随所に変更が加えられた。INTERNET Watchの公式Twitterアカウントでも、「当初掲載していた『他のアプリのキー入力を読み取る』動作は確認されておりません。」などと訂正している。
なお、TikTokの広報担当者は英紙The Telegraphの取材に対し、メッセージはTikTokのスパム対策機能によるものだと説明。混乱を避けるため、この機能を削除したアップデートをApp Storeに既に申請済みだとしている。(ただし、TikTokは今年3月にも同様の指摘を受けクリップボード取得をやめると表明した経緯がある。)
また、Ars Technicaは、TikTokの他にも53の人気アプリがクリップボードを読み取っていると指摘している。
(2)「最高裁『外国人への生活保護は違法』」
日付
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6/28 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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1.5万RT | |
内容
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「最高裁が初の判断 “生活保護法の対象に外国人は含まず”」というNHKニュースの映像を引用し、「最高裁『外国人への生活保護は違法』」とする投稿。 | ||
引用
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※アカウント名等モザイク処理は筆者による(以下同様) |
【検証】違法・違憲の判断はされていない
このニュース映像は、2014年に下された最高裁判所の判決を取り上げたもの。永住資格を持つ中国人の原告の訴えに対し、外国人は生活保護法に基づく保護の対象にはならないという判断を示した。
一方で、国はこれまで行政措置として、生活保護法に準じる事実上の保護を外国人に対して行っている。最高裁判決にもこの点は言及されているが、この時の判決の争点はあくまで生活保護法の解釈のみであり、この「事実上の保護」については是非を論じていない。したがって、最高裁が「外国人への生活保護は違法(あるいは違憲)」という判決を下したとするのは誤り。
詳しくは、インファクトの検証記事、BuzzFeedの記事(参照1、2)、弁護士の山口元一氏による解説記事も参照のこと。
(3)「インドの落雷(画像)」
日付
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6/27 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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3.8万RT | |
内容
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インドの複数の地域で25日、落雷によって合わせて少なくとも107人が死亡したというニュースに関連して、「インドの落雷で107人死亡って書いてあって、は?ってなって調べたらこんな感じでしたこれは死ぬな。」とする、画像付きの投稿。 | ||
引用
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【検証】1時間分の落雷を合成した画像
これは2017年、ニューデリーで1時間のうちに発生した89回の落雷を合成した画像(参照)。各地の落雷で107人が死亡したニュースとは無関係であるし、この画像のような光景が実際に見られたわけでもない。
同じ画像は過去に「浜松市内に落ちた雷」として拡散されたこともある(参照)。
(4)「渋谷のビルの落書き(画像)」
日付
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6/20 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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6300RT | |
内容
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ビルの壁にアニメ風の絵のあるニュース画面のキャプチャらしき画像の投稿。 | ||
引用
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【検証】コラージュ画像
画像は2018年にニュースサイト「ホウドウキョク」で配信された記事に掲載されたものに、関係の無いイラストを合成したコラージュである。「ホウドウキョク」のサイトは既に閉鎖されているが、外部サイトから記事と元画像の痕跡を見ることができる。
その他
FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。
また過去のまとめでも、新型コロナウイルス関連の様々な誤情報についても検証を紹介している。
※この記事の調査には、FIJのリサーチャーである八木風香氏が協力した。
(この記事はINFACT(運営:NPOニュースのタネ)からの転載です。過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年7月8日の予定です)
大船 怜(Ofuna Rei)
NPOメディア「INFACT(運営:ニュースのタネ)」編集委員
1986年千葉県出身。2011年3月東日本大震災をきっかけにネットの誤情報等の検証・注意喚起を行うTwitterアカウントを開設。現在派遣社員として一般企業に勤めながら「ネット上の情報検証まとめ」(@jishin_dema)を運営している。大船怜はペンネーム。