《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.41)【大船怜】


インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人)


(1)「WHOが方向転換 感染者の隔離は不要」

日付
7/4
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2800RT
内容
海外ユーザーの投稿を引用し、「WHOが急に方向転換 ?新型コロナウィルス感染者の隔離は必要ない ?検疫も必要ない ?ソーシャルディスタンスも必要ない ?感染者からも感染しない と言い出した。」とする投稿。
引用

※アカウント名等モザイク処理は筆者による(以下同様)

【検証】実際の発言は「無症状者から感染はまれ」で、既に修正

そもそも引用された動画は、6月9日(日本時間)のWHOの新型コロナウイルス対策担当専門家の発言を紹介したもので、投稿より1か月近く前のものである。また、実際の発言は「無症状患者からの感染はまれ」というものだった。

この発言は他の専門家らから反発を招き、翌日には「非常に少ない数の研究に言及」したもので「WHOの方針を述べたものではなかった」と修正されている

いずれにせよ、発言はあくまで無症状の感染者についてのもので、上掲の投稿にあるように「新型コロナウイルス感染者」全般についての話ではない。また、隔離や検疫、ソーシャルディスタンスについての言及は存在しない。

詳細はインファクト別稿の検証記事を参照のこと。


(2)「人身売買組織を米軍制圧 3万5千人の子供 10万人の遺体」

日付
7/8
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
1800RT
内容
「2020.4、国際人身売買組織を米軍が制圧、35,000人の子供を救出。さらに、クリントン財団地下トンネルから100,000人の子供の遺体発見。」などとする投稿。
引用

【検証】国防総省等が否定

この話は元は海外で拡散。いわゆる「ピザゲート」(元米大統領選民主党候補のヒラリー・クリントン氏が子供の人身売買や性的虐待に関与しているとする陰謀論)の一種で、「ペンタゴン・ペドファイル・タスクフォース」と呼ばれる米国防総省の特殊チームが、ニューヨークのセントラルパークの地下で檻に入れられた子供たちを発見したと主張されている。

ファクトチェックサイトの「Lead Stories」や、 ロイター通信の取材に対し、国防総省はそのような特殊チームは存在しないと否定(そもそも国防総省に軍事以外の事件捜査を行う権限は無い)。現場であるはずのニューヨーク市の警察や、児童福祉局といった関係者も、こうした事件の存在について感知していないと回答している。


(3)「マクドナルド敗訴で肉の正体暴かれる」

日付
7/7
発信者
キラキラの毎日
媒体
まとめサイト
拡散数
Twitterで最大1400RT
内容
【衝撃】マクドナルドが裁判で敗訴!ついに発覚!マクドナルドの肉の正体!」と題し、「イギリスの有名シェフ、ジェイミー・オリバーがマクドナルドに対して、裁判を起こしました。しかもその裁判では『マクドナルドの肉の正体は、食品として定義不能である』という内容で、なんとオリヴァーは勝訴しました。」などとする記事。

【検証】裁判は存在せず 問題の肉は日本では不使用

イギリスの有名シェフであるジェイミー・オリヴァー氏が2010年、アメリカのマクドナルドでくず肉などを原料にした加工肉(通称「ピンクスライム」)が使われているを批判し、話題を呼んだのは事実。しかし、そのことで裁判を起こしたことは無い。

米マクドナルドは批判を受け、2012年にこの加工肉の使用中止を発表。また、日本では元々この加工肉は使われていないという。

詳細はBuzzFeedによる検証記事を参照。


(4)「ヒース・レジャーを見て狂喜する女性(動画)

日付
7/6
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
1.9万RT
内容
「ヒース・レジャーを間近で見れたことに発狂する女性とヒースの神対応をご覧ください」とする動画付きの投稿。
引用

【検証】正体は授賞式ゲストの女優

動画では、オーストラリアの俳優ヒース・レジャーさん(故人)がレッドカーペットの上でインタビューを受けているところに、後ろにいたスタッフ姿の女性が突然叫び声を挙げる。レジャーさんが苦笑しながら女性に歩み寄りキスをすると、彼女は放心したように倒れ込む、という内容。

まるでレジャーさんが偶然居合わせたファンの女性に粋な対応をしたかのように見えるが、女性の正体は実はコメディ女優のマグダ・ズバンスキーさん。2006年のオーストラリアの映画祭での出来事で、彼女は出演した人気TVドラマ「キャス・アンド・キム」の登場人物に扮し、キャラクターとしての行動を演じている。

彼女はその後もドラマのキャラクターを演じたまま授賞式に登壇し、レジャーさんの特別賞受賞を発表したり、その後の写真撮影に応じたりしている。詳細はアメリカのオンライン芸能メディアE! Onlineの記事(2015年10月23日)を参照。


その他

FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。

また過去のまとめでも、新型コロナウイルス関連の様々な誤情報についても検証を紹介している。

 

(この記事はINFACT(運営:NPOニュースのタネ)からの転載です。過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年7月22日の予定です)

 

著者紹介

大船 怜(Ofuna Rei)

NPOメディア「INFACT(運営:ニュースのタネ)」編集委員
1986年千葉県出身。2011年3月東日本大震災をきっかけにネットの誤情報等の検証・注意喚起を行うTwitterアカウントを開設。現在派遣社員として一般企業に勤めながら「ネット上の情報検証まとめ」(@jishin_dema)を運営している。大船怜はペンネーム。