《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.60)【大船怜】


インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。アメリカ大統領選に関する情報は58号「米大統領選 特別編」も合わせてご覧ください。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人)


(1)「テキサス州のバイデン陣営の責任者が不正投票事件で逮捕」

日付
11/12
発信者
看中国
媒体
Web記事
拡散数
Twitterで4100RT
内容
【速報】テキサス州のバイデン陣営の責任者が不正投票事件で逮捕された」と題する記事

【検証】逮捕の事実無し 告訴は根拠無しで棄却

この看中国の記事はShare News Japanアノニマスポストなどのまとめサイトにも転載され、Twitterで数千RTと拡散されている。

記事は米メディアの主張を引きながら、バイデン陣営のテキサス州政治ディレクターを務める政治コンサルタントのダラス・ジョーンズ氏が「ハリス郡の選挙不正に巻き込まれ、FBIに身柄を拘束され」、その直後「バイデン氏の選挙チームから解雇された」と述べている。

しかし、ジョーンズ氏は取材に電話で応答。拘束や解雇をされた事実は無いと否定している。9月には保守派の活動家がハリス郡での選挙不正を訴えジョーンズ氏がそれを主導したとして告訴しているが、根拠が無いとして既に棄却されている。詳細はニューヨークタイムズFactCheck.orgの検証記事を参照。


(2)「ドミニオンが全米で270万票のトランプ票を削除」

日付
11/13
発信者
トータルニュースワールド(まとめサイト)
媒体
Web記事
拡散数
4800RT
内容
【速報!】(不正票ソフト)ドミニオンが全米で270万票のトランプ票を削除したことが判明!!」と題する記事

【検証】不正の根拠とされたデータ提供元が否定

この主張は元々米メディアのワン・アメリカ・ニュース・ネットワーク(OANN)が放送したもので、トランプ大統領自身もTwitterで引用。大統領選において一部の州で使われた投票システム「ドミニオン」が、不正な票の操作に関与したとしている。

OANNの主張の根拠は、調査会社エディソン・リサーチ社によるデータ分析とされている。しかし、米ファクトチェックサイトThe Dispatchの取材に対し、同社社長は「エディソン・リサーチはそのようなレポートは作成しておらず、またいかなる選挙不正も認知していない」と否定している

そのほか、連邦や州の複数の当局や、「ドミニオン」の提供元企業がOANNの主張を否定する声明を発表している。詳細はBBCAFP通信による検証記事も参照。


(3)「ミシガン州が選挙結果の証明を拒否」

日付
11/18
発信者
門田隆将(ジャーナリスト)
媒体
Twitter
拡散数
3000RT
内容
ドナルド・トランプ米大統領の同日の投稿を引用し、「ミシガン州がバイデン勝利とした選挙結果の証明を拒否した。これでミシガンの選挙人『16人』が宙に浮く。つまり空白。」などとする投稿

【検証】郡レベルで一時混乱 後に州で勝利結果を認定

ミシガン州で最多の人口を抱えるウェイン郡では17日、共和・民主両党2人ずつから成る開票点検委員のうち、共和党の2人が票数の不一致を問題視し選挙結果の認定に反対。その数時間後には賛成に転じたが、脅迫的な圧力を受けていたとして翌18日には賛成の取り消しを要求するなど、認定を巡る混乱が起きていた(参照)。

しかし、これはあくまでもミシガン州の中の1つの郡での出来事である。州全体では18日時点では選挙結果に関する決定はされておらず、23日の会合において賛成多数で認定されている(参考)。


(4)「プエルトリコで数えていない投票用紙 トランプ票だろう」

日付
11/12
発信者
西村幸祐(批評家)
媒体
Twitter
拡散数
1900RT
内容
プエルトリコで投票1週間後に数えていない投票用紙が。投票用紙が詰まったブリーフケースが100以上発見」「当然トランプへの票だろう」などとする投稿

【検証】米大統領選ではなく、米自治領議会選の話

米大統領選と同日の11月3日に米自治領プエルトリコで行われた選挙に関して、投票1週間後に未集計の投票用紙が入った126のブリーフケース(票数は不明)が発見されるミスが起きたのは事実。米NBCニュースなどが伝えている。

しかし、プエルトリコで行われたのは大統領選ではなく議会総選挙。プエルトリコで行われるのは各党の大統領候補を選ぶ予備選挙までで、本選の投票は行われない(参照)。上述のNBC記事も「プエルトリコの住民は大統領選の投票を行わないので、この件は大統領選とは関係しない。(Residents of Puerto Rico do not vote for president, so the development is unrelated to the presidential election.)」と説明している。

西村氏は「当然トランプへの票だろう」と、あたかも一件が大統領選に関係しているようにコメントしているが、これは誤りだ。


(5)「マスクの有無で感染リスク〇%(画像)」(再出)

日付
11/18
発信者
岩田健太郎(医師)
媒体
Twitter
拡散数
4500RT
内容
飛沫を飛ばす人と相手がそれぞれマスクをしている場合としていない場合の「RISK OF TRANSMISSION(感染リスク)」をパーセンテージで表示し、双方がマスクをして「6FEET(6フィート)」離れた場合のリスクを「0%」とする画像の投稿
引用

【検証】数字の根拠は不明 7月にも拡散

これは7月に拡散されこの連載でも取り上げたのと同内容の画像だが、マスクの着用や距離の確保によって感染リスクが減少するのは概ね事実と考えられるものの、具体的な「〇%」という数字の根拠は不明である。また、これらの対策をしてもリスクがゼロになるということは統計上考えられない。詳しくは下記記事の(1)を参照。

岩田氏自身も、マスクや距離の感染予防効果についての論文を紹介しつつ、画像の「数値そのものは出どころ不明」と認める投稿をしている。

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.44)【大船怜】

 

※この記事の調査には、インファクトの西村晴子が協力した。

(この記事はInFact(運営:NPOインファクト)からの転載です。過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年12月2日の予定です)

 

著者紹介

大船 怜(Ofuna Rei)

NPOメディア「InFact(運営:インファクト)」コレスポンデント
1986年千葉県出身。2011年3月東日本大震災をきっかけにネットの誤情報等の検証・注意喚起を行うTwitterアカウントを開設。現在派遣社員として一般企業に勤めながら「ネット上の情報検証まとめ」(@jishin_dema)を運営している。大船怜はペンネーム。