インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜=ネット上の情報検証まとめ管理人)
今週紹介する“要注意”情報
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(1)「国会議員の給料 5月分から年間421万円引き上げ」
日付
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4/11 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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9900RT | |
内容
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「国会議員の給料 5月分から月額26万円、年間421万円引き上げ」と題するNEWSポストセブンの記事(ライブドアニュース転載版)を紹介し、「なんじゃこりゃ! これで『批判はやめよう』だと?」などとコメントした投稿。 | ||
引用
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【検証】2014年の記事
この記事は2014年5月のもので、この「引き上げ」は既に実施済み。しかし、投稿は記事の日付に触れておらず、あたかも今年5月分から新たな増額が行われるかのような誤解を招いている。
当時の「引き上げ」は、2011年3月の東日本大震災を受け断続的に行われた国会議員給与の削減措置の期限切れによるもの。つまり震災以前の本来の金額に戻ったのであり、「引き上げ」と呼ぶのもやや語弊がある。
記事は過去にも古いニュースと気付かれないままたびたび話題に上っており、直近では消費増税を数か月後に控えていた2019年7月に拡散したため、BuzzFeedが検証記事を出していた。
(2)新型コロナウイルス関連特集
以下、新型コロナウイルス(新型肺炎)に関連する“要注意”情報のうち、主要なものを簡潔に紹介します。(順不同)
今週はLINEやSNSなどで同一の文章が次々と転送される、いわゆる「チェーンメール」方式で拡散された誤情報が特に目立ちました。仲の良い人からの情報や、信用できそうな名前が書かれた情報でも、安易な転送・拡散は決してしないようにしましょう。
1.「日赤医師からのメッセージ」
→日赤系各病院が否定
「私の病院のコロナ病床は満床になりました」「このまま感染が拡大すれば、「助ける命を選択する医療」にシフトしなければならなくなります。」などとして、外出自粛を呼びかける内容がLINEやSNSなどでチェーンメール的に拡散。発信元としては主に東京都渋谷区の日本赤十字社医療センターの名が挙げられており、同センターに実在する医師の個人名が書かれたものもあった。
日赤医療センターは「本件内容は当センターで発信したものではございません」とHP上で否定。問い合わせにより本来業務に支障をきたしているという。
地方によっては同じ日赤系列の和歌山、岐阜、静岡の病院が名前を使われていたが、いずれのも病院も発信を否定している。また実在しない「日赤総合病院」なる名前が書かれるパターンもあった。
- 医師名かたる新型コロナチェーンメールに注意 日本赤十字社医療センター「当センターで発信したものではない」 (ねとらぼ)
- 【重要】当センター医師を騙る新型コロナウイルス感染症に関するチェーンメールについて (日本赤十字社医療センター)
- 赤十字医療施設の医師をかたる新型コロナウイルス感染症に関するチェーンメールについて (日本赤十字社和歌山医療センター)
- 当院医師をかたるチェーンメールについて (日本赤十字社岐阜赤十字病院)
- 「日赤病院のドクターから送られてきた」はデマ SNSで拡散 (静岡新聞)
- <公職者による拡散例>小野澤健至氏(山形県新座市議・削除済)、飛松妙子氏(佐賀県鳥栖市議)、岡田光正氏(静岡県焼津市議)、田島徹氏(熊本県副知事)
2.「深く息を吸って10秒我慢できれば感染していない」
→医学的根拠無し
「台湾の専門家からの情報」としてこちらもチェーンメール的に拡散されたが、その台湾のファクトチェック機関や、WHO(世界保健機関)も医学的根拠が無いとして否定している。
- 【錯誤】網傳「由於NCP新型冠狀病毒,有0~24天的潛伏期…專家提供一方法讓你盡早知道自己肺部的狀況:最、最、最大深度地“吸氣”並且“屏氣”超過10秒以上…證明肺部沒有纖維化」? (台湾ファクトチェックセンター)
- WHO公式アカウントによるTwitter投稿
- 「深く息を吸い10秒我慢できれば…感染可能性低い」愛知県警が誤情報を投稿 (読売新聞)
- <公的機関、公職者による拡散例>愛知県警広報課(削除済)、犬伏秀一氏(大田区議・削除済)
3.「慶應の先生の感染防御マニュアル」
→本人が否定
実在する慶應義塾大学医学部教授・佐谷秀行氏の名前を使い、「ほとんどの感染患者さんは食事中に感染しているようです」などの内容が拡散。これも上の2つと同様チェーンメール化していたが、佐谷氏本人が「これは私自身が流したものではなく、内容についても責任を持つことが出来ません」などと否定している。
- [最新情報] 新型コロナウィルス感染防御に関するチェーンメールについて (慶應義塾大学医学部先端医科学研究所遺伝子制御研究部門)
- 【ご注意ください】当院の医師名で出回っている情報について (慶應義塾大学病院)
- <メディア、著名人による拡散例>NetIB-NEWS(ネットメディア・削除済)、池田あきこ氏(絵本作家)
4.「こんな時に野党の審議拒否」
→与野党合意による休会
4月7日の緊急事態宣言を受け、8日と9日の国会審議は与野党合意の上で休会になっている。したがって、「野党の審議拒否」というのは誤り。
- 緊急事態宣言後の国会「こんな時に野党が審議拒否」は誤り。「全くのフェイク」と批判も (BuzzFeed)
- <公職者、著名人による拡散例>岡下昌平氏(衆議院議員・削除済)、上念司氏(経済評論家)、加藤清隆氏(政治評論家)、門田隆将氏(作家)
5.「○○で感染者」
→各地で誤情報拡散 逮捕者も
先週に引き続き、店名などを名指しした多数の誤情報が各地で発生。たまたまビルが休館になったり工事関係者が出入りしていたりといったことから勘違いされたケースもあるが、山形では故意に嘘の情報を流し店の営業を妨害したとして逮捕者も出ている。
- 「感染者いる」飲食店の業務妨害 山形県警、28歳男を容疑で逮捕 (山形新聞)
- 「焼津で新型コロナ感染者」デマ拡散 市HPで否定 (静岡新聞)
- 飲食店への影響深刻 (南信州新聞)
- 「感染者が出た」新型コロナのデマ情報がSNSで拡散 商業施設「売り上げ減った」 沖縄県内で実害 (琉球新報)
- 新型コロナ 「感染者が宿泊」デマ 大館市「拡散やめて」 ホテル休業で勘違い (北鹿新聞)
- 「感染者ゼロなのに…」 デマ拡散で利用客減 旭のスーパー (千葉日報)
- 広がるコロナ風評被害に悲痛な声 福井県内でデマ、営業自粛の店も (福井新聞)
- SNSでデマ拡散 飲食店に被害 (NHK三重)
6.「外出自粛で人間の様子を見に来た動物(画像)」
→いずれも2018年以前の写真
クマの写真は2017年アメリカのもの。2枚のシカの写真は正確な出典は不明であるものの、1枚は2018年、もう1枚は少なくとも2016年には存在が確認できる。したがって、いずれも新型コロナウイルスによる外出自粛とは関係が無い。
- <著名人による拡散例>ゾマホン・スールレレ氏(起業家。ゾマホン・ルフィン氏(外交官、タレント)の甥)
7.「アメリカ大使館が『近いうちに日本は医療崩壊』と警告」
→「医療崩壊」は不正確
大使館は、感染拡大により米国市民がこれまで通りの医療を受けられなくなる可能性を指摘しているが、「近いうちに医療崩壊」とまでは述べていない。
8.「安倍首相が『平均的な共働き夫婦の月収は75万円』と発言」
→あくまで説明のための例
新型コロナウイルスの影響で収入が減った世帯への現金給付の額と関連させ、安倍晋三首相がかつて「日本の平均的な共働き夫婦の月収 ご主人の月給が50万円 奥さんのパート収入が月25万円 ご夫婦で月75万円の収入」と発言したとする画像が拡散。
しかし、実際の発言はあくまで説明のため「夫婦で月75万円」の家庭を例に採ったに過ぎず、安倍氏がこの額を平均的と言ったわけではない。
- 安倍首相「平均的な共働き夫婦の奥さんの月収」画像は誤り 発言が改変、検索で大量ヒット (BuzzFeed)
9.「患者の多くの肺が繊維化。生存率は肺癌より低い」
→線維化を否定する内容の番組
台湾のテレビ番組のキャプチャ画像が使われていたが、この番組は実際には「多くが線維化」を否定する内容だった。生存率についてもあくまで合併症がある場合の説明である。
10.「『新型コロナは同性愛者への天罰』と発言のイスラエル保健相が罹患」
→発言は別人
イスラエルの保健大臣でユダヤ教超正統派のヤコブ・リッツマン氏が、過去に同性愛に批判的な発言をしたこと、また、先日新型コロナウイルスへの感染を発表したことは事実。しかし、「天罰」発言は別の超正統派指導者によるものである。
- Update on fake news about Israeli health minister’s coronavirus comments (CAMERA’s UK Media Watch)
- 鈴木一人氏(政治学者・削除済)
11.「緊急事態宣言で沖縄行き飛行機は既に満席(画像)」
→上位クラス以外は空席の表示
翌7日に政府の緊急事態宣言が発令されることが決定していた6日、東京・羽田空港から沖縄・那覇空港への航空便が既に満席になっているとする情報が拡散。
上掲の投稿はその1つだが、添付されている全日本空輸(ANA)予約画面のスクリーンショット画像を見ると、「満席」という表示があるのは実際には上位クラスである「プレミアムクラス」のみ。運賃が表示されている席は一般クラスの空席で、この画面では出発済み以外の全ての便で予約が可能だ。
沖縄タイムスの取材でも、各社の航空便はむしろ普段より空席が目立つという。
その他
FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。
また過去のまとめでも、新型肺炎関連の様々な誤情報について検証を紹介している。
(この記事はINFACT(運営:NPOニュースのタネ)からの転載です。過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年4月22日の予定です。)
大船 怜(Ofuna Rei)
NPOメディア「INFACT(運営:ニュースのタネ)」編集委員
1986年千葉県出身。2011年3月東日本大震災をきっかけにネットの誤情報等の検証・注意喚起を行うTwitterアカウントを開設。現在派遣社員として一般企業に勤めながら「ネット上の情報検証まとめ」(@jishin_dema)を運営している。大船怜はペンネーム。