ドナルド・トランプ氏放言「日本ではボウリング球を車のボンネットに落とすテストがある」【PolitiFact】


日本では「ボウリングボールを20フィート(約6m)の高さにまで持っていって、そのボールを車のボンネットに落とす。そしてもしボンネットがそれでへこんだりしたら、その車は検査に落ちる…こんな扱われ方は酷いものだ」

ドナルド・トランプ(米大統領)、2018年3月14日水曜日、非公開の資金調達集会にて。

(注:この記事は、FIJがPolitiFactファクトチェック記事を許諾を得て翻訳したものです。他サイト等への転載を禁じます。)

2018年3月15日(木)17:41  Jon Greenberg

トランプ大統領はしばしば他国がいかに米国製品を不公平に取り扱っているかについて語るが、ミネソタで開催された非公開の資金調達イベントでは、日本のとある慣行を取り上げた。

「日本にはボーリングボールテストというものがある。これが何だか知っていますか?」

ワシントンポストが入手した録音でトランプ氏はこう語る。

「これはボーリングボールを20フィート(約6m)の高さにまで持っていって、そのボールを車のボンネットに落とすというものだ。そしてもしボンネットがそれでへこんだりしたら、その車は検査に落ちる。ほんの少しでもへこんだだけでも彼らはこう言ったんだ、ダメだね、不合格、と。こんな扱われ方は酷いものだ。実に酷い」

これに対してワシントンポストは「トランプ氏は何のことを言っているのか不明瞭だった」と注記している。

ここから我々は調査の必要性を感じた。

まず我々はホワイトハウス報道局にトランプ氏の発言が何を念頭におくものだったか問い合わせたが、コメントを得ることはできなかった。もっともサンダース報道官は定例会見の中で、トランプ氏は冗談を言っただけだったと述べた。

しかしながら我々は、トランプ氏の述べたテストの内容に大まかに当てはまるものを見つけた。

そこにはボーリングボールも20フィートの高さからの落下試験もなかったが、確かに日本の自動車事故対策機構は、歩行者頭部保護性能試験と呼ばれるテストを行っていることが判明した。これは、車が歩行者と衝突した時に、歩行者の頭部にかかるであろう衝撃を計測することを目的としたものだ。

この試験は、厳密に重さや大きさを調整された半球型の装置(半球ボーリングボールといったところか)を車のボンネットとフロントガラスに向けて発射するものを含んでおり、この半球型装置は衝突時の威力を測定する。

以下は機構のホームページにある画像だ。

注目すべきなのは、最大の頭部インパクタで4.5kg、およそ10ポンドであるということだ。

つまり、ボーリングボールに関しても、その重さや落下させる高さに関しても、その詳細においてトランプ氏は全て間違っているということだ。

またこれら詳細の情報を抜きにしても、トランプ氏は同試験の目的と本質を完全に誤って理解している。

トランプ氏は「ボンネットがへこめばその車が不合格になる」と述べたが、それではボンネットの強度に関する試験となるだろう。

それとは対照的に、この試験は、事故における人の頭部とそれにかかる衝撃に関するものである。

「トランプ氏のいう内容は、実際の試験とは正反対のものです」と、乗り物と消費者製品の安全性を研究するSafety Research and Strategy社長のSean Kane氏は語る。

実際に試験では、ボンネットがへこんだり変形したりすればするほど、歩行者の頭部の安全性のためには良いとされるのだ。

Kane氏は、「これはどのようなタイプの衝突事故にしてもそうなのですが、現代の車を見れば、車に対しての衝突のダメージは以前よりずっと大きいことが分かります。車の損壊が多々起こるのは、衝突時の衝撃を車が吸収して、歩行者から逸らしているためなのです」と言う。

ウェイン州立大学の生体医用工学の論文も同様の内容の報告をしている。論文によれば、“頭部の負傷の可能性を下げるためには二つの主要な原則が極めて重要となる。それはすなわち、車体が変形するための十分なスペースの確保と、衝撃がかかる車の部分の低堅度の確保である。”

しかしながら、トランプ氏もある一点に関しては正しい。それは、日本で販売される米国製の車は、全てのモデルが、少なくともここ10年は日本の安全基準に達している必要があるという点である。トランプ氏は、これがアメリカの車製造会社にとってハードルになるという点では正しい。

注意すべき点として、ヨーロッパにも同様の基準が存在するということがある。2000年代初頭、日本とヨーロッパにおいて、車が歩行者を跳ねる問題は米国よりも深刻だった。

例えば日本では、交通事故における死傷者の27%が車に跳ねられた歩行者だった。一方米国ではその値は13%に過ぎなかった。

「頭部衝撃測定テストは標準のテストで、もう何年もの間存在し続けています」と、ミシガン大学ディアボーン校の機械工学科教授、Pankaj Mallick氏は言う。

「米国の車製造会社もこの点についてはよく認識しています。しかし現在、ボンネットの適性検査に関して、米国の高速道路交通安全局はこの試験の実施を求めていないのです」

Kane氏は、米国が日本やヨーロッパと比べて極めて低い安全基準しか有していないことを指摘する。

「もし米国の車メーカーが、より安全な車を製造する気があるなら、日本市場でもヨーロッパ市場でも製品を販売することが可能でしょう。しかしその気がないなら、それは経営判断としか言いようがありません」

判定

トランプ氏は、日本では「ボーリングボールを20フィートの高さにまで持っていって、車のボンネットに落とす。そしてボンネットがへこめばその車は検査に不合格になる」と述べた。

アメリカ製の車は日本の基準に達している必要がある。しかしトランプ氏は、厳密な管理の下に運用されているテストを、ボーリングボールを20フィートから落下させる過程を含んでいないにも関わらず、極めて不正確な表現で描写した。

さらにトランプ氏が最も誤っている点は、テストの目的である。すなわち、彼はその目的に関して真逆の理解をしているのだ。テストはボンネットの強度を測定するためのものではない。ボンネットが損傷してへこめばへこむほど、歩行者の頭部の安全性にとっては良いのだ。トランプ氏のテストの理解は全くの見当違いであり、我々はこの言説を「誤り」と判定する。

(元記事の出所:Donald Trump botches Japanese bowling ball on the car hood test