インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜=ネット上の情報検証まとめ管理人)
今週紹介する“要注意”情報
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(1)「歴代総理で安倍氏が初めて硫黄島に訪問」
日付
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3/10 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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3.2万RT | |
内容
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「歴代総理で安倍総理が初めて硫黄島に訪問しました。その時に滑走路下に未だ遺骨が眠っているのを知った総理は泣きながら感謝と敬意の土下座をされました。ここまでした総理がいただろうか?」などとする投稿。 | ||
引用
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【検証】安倍氏は現職総理として3人目
安倍氏の硫黄島訪問は2013年4月で、首相官邸公式YouTubeアカウントが投稿したこの動画の1:48頃から映る写真が上掲の投稿の添付画像と同じシーンと見られる(安倍氏が跪いているのが「泣きながら土下座」なのかは不明)。この動画の冒頭テロップにある通り、安倍氏の硫黄島訪問は「現役の総理としては3人目」だ。
現役の総理として初めて硫黄島に訪問したのは小泉純一郎氏で、2005年のこと。また2010年にも菅直人氏が総理として訪問している。
上掲の投稿者はその後、「確かに硫黄島に初めて訪問したのは安倍総理ではありませんでした。私の勘違いでした」と訂正した。
(2)「香川のゲーム規制条例 海外でもネタに(画像)」
日付
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3/13 |
発信者
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一般ユーザー |
媒体
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拡散数
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1万RT | |
内容
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条例制定に向けた動きが進む「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)」に関して、「香川県のゲーム規制条例って海外でもネタにされてんのかw」などのコメントとともに、「日本のローカルな条例が海外ゲーマーに驚きと共に伝わり、『Can you say that in Kagawa?(お前、それ香川でも言えるの?)』なんて言葉が海外の配信サイトでは定着した。」などの文章のスクリーンショット画像を添付したツイート(削除済み)。 | ||
引用
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【検証】文章はフィクション
このスクリーンショットの元の文章は「香川県でゲーム規制条例(通称、うどん条例)が成立してから5年がたった」というタイトルで1月21日に文章配信サイトnoteに公開されたもので、あくまでもフィクションである。
文章冒頭には、
※これは香川県の条例草案を元にしたフィクションです。草案を除き、実在の団体・ゲーム・人物とは一切関係ありません。
と注意書きがあり、更に上記投稿の拡散後には、
一部を切り出して勘違いされる可能性のある引用はしない、していたら削除していただけるようお願いいたします。
と追記された。
(3)新型コロナウイルス関連特集
以下、新型コロナウイルス(新型肺炎)に関連する“要注意”情報のうち、主要なものを簡潔に紹介します。(順不同)
1.「NHKの中国語版が『日本新型コロナウイルス 』と呼んでいる」
→「日本での感染状況」の誤訳
NHKの国際放送・NHKワールドJAPANによる中国語のウェブ記事に「日本新冠病毒疫情信息汇总」という文言があるのをもとに、この「日本新冠病毒」の部分を「日本新型コロナウイルス」の意味と誤解した投稿が拡散。実際には「日本における新型コロナウイルスの感染状況まとめ」を意味している。
NHKワールドJAPANでは、各国における新型コロナウイルスの状況を表す際に同様に「(国名)新冠病毒」という表現が使われていることが確認できる。(参照1、2)
先日も同様の文言から「駐日中国大使館が『日本新型コロナウイルス』と呼んでいる」という誤った情報が拡散されていた。
- NHK中国語版が「日本新型コロナウイルス」と報じた→誤り。国会議員らが指摘したが… (BuzzFeed)
- <著名人・公職者による拡散例>孫向文氏(漫画家)、山田宏氏(参議院議員)
2.「新型コロナウイルスの空気感染が証明された」
→掲載元が誤りとして訂正
JBpressは3月14日、「ついに証明された、新型コロナは空気感染する」と題した記事を掲載。「『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』という1812年に創刊された世界で最も権威があると言われる医学誌」に、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の空気感染はありうる」という内容の論文が掲載されたとして、「同誌に論文が載ること自体、信憑性の高さを示している」などと書いていた。
しかし、その後JBpressは、次のように訂正し、記事を削除した。
記事中で紹介した英論文は『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』誌に掲載されたものではなく、『メドアーカイブ』というサイトに掲載された予稿であり、同誌に掲載されたものではありませんでした。さらに『空気感染』という言葉は『エアロゾル伝播』と表現すべきであり、正確さに欠けました。
「メドアーカイブ」は査読による検証を経る前段階のプレプリントと呼ばれる論文が公開される場で、ここに掲載されていること自体が「信憑性の高さを示している」わけではない。また、空気感染とエアロゾル伝播はそれぞれ別の概念とされている(BuzzFeedの解説を参照)。
- 3月14日に当ページに掲載した記事について (JBpress)
3.「C・ロナウドが自身所有のホテルを病院に提供」
→関係者が否定
サッカーポルトガル代表のスター選手クリスティアーノ・ロナウド氏が、母国で自身が経営するホテルを病院として提供するとスペイン紙が報道。医師や従業員の給与も負担すると報じられ世界中に伝えられたが、ホテル関係者はこれを否定しており、元のスペイン紙も電子版記事を削除するなどしている。
- ロナルドのホテルを病院は偽情報 SNSで拡散、関係者が否定 (共同通信)
- C・ロナウドの“病院”無償提供デマ…ホテル側が改めて証言「デマです」 (ゲキサカ)
- C・ロナウドのホテル無償提供報道は誤報か…ホテル側は『GOAL』の取材に「そのような情報はない」 (Goal.com)
4.「ドライブスルー方式の検査は医師の診察を伴わないことが多い」
→検査前に相談・診察あり 厚労省がツイートを訂正
厚生労働省の公式Twitterアカウントは15日、「『ドライブスルー方式』のPCR検査を実施しない理由について」として、「新型コロナウイルス感染症にかかっているのではないかと心配される方が、PCR検査を受けるためには、医師の診察が重要です。『ドライブスルー方式』では、医師の診察を伴わないことが多いため、我が国では、実施しておりません。」などとツイート。
しかし、翌16日、同アカウントはこのツイートを訂正。「現在ドライブスルー方式でのPCR検査を行っている国では、問診票を配布し、医師が検査の要否を判断しているものがあると承知しており、正確性を欠く表現であるため、訂正させていただきます。」などと投稿した。
「ドライブスルー方式」の新型コロナウイルス検査は既に韓国、ドイツ、アメリカなど多数の国で行われ始めているが、いずれも医師との相談や診察により検査の必要性を認められた人を対象に行うと報じられている。
- 厚生労働省公式アカウントによる訂正ツイート
その他
FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。
また過去のまとめでも、新型コロナウイルス関連の様々な誤情報について検証を紹介している。
(この記事はINFACT(運営:NPOニュースのタネ)からの転載です。過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年3月25日の予定です)
大船 怜(Ofuna Rei)
NPOメディア「INFACT(運営:ニュースのタネ)」編集委員
1986年千葉県出身。2011年3月東日本大震災をきっかけにネットの誤情報等の検証・注意喚起を行うTwitterアカウントを開設。現在派遣社員として一般企業に勤めながら「ネット上の情報検証まとめ」(@jishin_dema)を運営している。大船怜はペンネーム。