《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.19)【大船怜】


インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人)


(1)「ヴィーガンの間でキャベツを散歩させるのがブームに」

日付
2/8
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
7800RT
内容
「ヴィーガンの間でキャベツにリードを繋いで散歩するのがブームに」などと書かれた画像付きの投稿。
引用

アカウント名等モザイク処理は筆者による

【検証】ヴィーガンと無関係のアートパフォーマンス

これは芸術家の韓冰(Han Bing)氏による「遛白菜」と呼ばれるアートパフォーマンスの光景。上掲の写真は2014年頃のものと見られるが、キャベツ(正確には白菜)を散歩させるというパフォーマンス自体は2000年から始まっている。日本語ではマイナビニュース(ライブドアニュース転載版)の記事で紹介されている。

韓氏はパフォーマンスの意図について「我々が盲目的に浸っている日常がいかに決まりきったルーチンになっているかに目を向けさせる」などとミステリアスに語っているが、ヴィーガン(菜食主義)との関連は特に述べられていない。

上掲の投稿をしたアカウントは「反ヴィーガンアカウント」を自称し、誤りとの指摘に対し「たまにはこういう微笑ましいネタがあった方が良いかなと思って」「この投稿を本気で受け取られちゃうと困るね」などと虚偽を認める投稿もしている。


(2)「『日本に震度10級の地震』というタイトルのスパムウイルス」

日付
2/5?
発信者
不明
媒体
チェーンメール
拡散数
Twitterで2900RT
内容
「皆様ご注意下さい。『日本に震度10級の地震』というタイトルの動画が来たら絶対に開けないでください。すぐに削除して下さい。 実際の動画ではなくスパムウイルスですが、携帯電話にある送金機能など、銀行業務の情報を引き出すそうです。現在、新聞にも報道されたそうです。」といった文面のメッセージ。

【検証】実際の動画や報道は確認できず 実在しない可能性

音楽評論家の湯川れい子氏がアナウンサーの生島ヒロシ氏から知らされた話としてツイート(現在は削除・キャッシュ)。約2900件リツイートされたほか、同様に注意を呼び掛ける投稿がTwitter上でも多数見られた。

詳細はねとらぼやブログ「ネットロアをめぐる冒険」で検証されている。注意を呼び掛ける文言はチェーンメールとして拡散されていると見られるものの、「『日本に震度10級の地震』というタイトルの動画」そのものを受け取ったという証言や、スクリーンショットなどの証拠は確認できない。「新聞にも報道された」というのも確認できず、事実か不明だ。

したがって、「『日本に震度10級の地震』という動画に気を付けて」という話だけが独り歩きし、動画そのものは実在しない可能性が否定できない状況だ。


(3)新型コロナウイルス関連特集

以下、新型コロナウイルス(新型肺炎)に関連する“要注意”情報のうち、主要なものを簡潔に紹介します。(順不同)

1.「ウイルスはアルコールでは消毒出来ない」
→厚労省やWHOも勧める

厚労省の公式Twitterアカウントでは「新型コロナウイルス予防にアルコール消毒は効果がないという情報が広がっていますが、これは誤った情報です。」などとツイートし、アルコール消毒を対策の一つとして勧めている。また世界保健機関(WHO)も、新型コロナウイルスに関する特設サイトのQ&Aの中でアルコール消毒について言及(「What can I do to protect myself?」の項目)し、その効果を認めている。


2.「京都のホテルが価格破壊」
→以前からある特別価格

「10円~」などとなっているホテルの宿泊プラン検索画面が話題になったが、これは誕生日限定など特別な条件が付いた価格で、しかも新型コロナウイルスの流行以前から存在するプランだった。


3.「子宮頸癌はコンドームを一瞬つければ防げる」
→コンドームだけで感染は防げない

医師の高須克弥氏が、新型コロナウイルスとの比較の中で述べた主張。子宮頸がんの原因となるウイルスはコンドームで防護される部位以外にも分布するため、コンドームだけで感染を防ぐことはできない。高須氏は後に誤りを認め訂正している。


4.「サイパン・パラオに日本人渡航禁止」
→感染や渡航制限は無し

ミクロネシアと呼ばれる太平洋島嶼部の地域では、現在3か国が日本からの直接入国に制限を加えている。このうち最初に発表されたのがミクロネシア連邦だが、地域名としての「ミクロネシア」とその中の一国である「ミクロネシア連邦」が混同され、「ミクロネシア連邦」ではないサイパンやパラオで渡航制限が行われているかのような誤解が発生した。一部報道でも同じ誤りがあったが、サイパンやパラオなどで感染例や渡航制限は無い。


5.「深圳が自主的に封鎖」
 →香港の入境管理強化を誤解

これは一部まとめサイトなどが中国語で書かれた掲示板投稿を誤解したもので、実際は香港政府が深圳から入境する人の管理を強化するということ。入境者は2週間外出が禁じられることから「事実上封鎖」と表現する報道もあるが、あくまで香港との間だけのことであり、武漢のように市内へのアクセスが全面的に遮断されるわけではない。


その他

FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する国内外の情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設している。他に「高知県議2人が検査拒否し武漢から帰国後感染発覚」「エアロゾル感染を確認。要するに空気感染」などの誤情報や、真偽に疑義のある情報も紹介し、随時更新している。

また、「中国人が日本の健康保険に悪乗りするため押し寄せる」「新型コロナウイルスにHIVウイルスのタンパク質が挿入されている」など、前回のまとめでも新型肺炎関連の検証を多数紹介している。

 

(この記事はINFACT(運営:NPOニュースのタネ)からの転載です。過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年2月19日の予定です)

著者紹介

大船 怜(Ofuna Rei)

NPOメディア「INFACT(運営:ニュースのタネ)」編集委員
1986年千葉県出身。2011年3月東日本大震災をきっかけにネットの誤情報等の検証・注意喚起を行うTwitterアカウントを開設。現在派遣社員として一般企業に勤めながら「ネット上の情報検証まとめ」(@jishin_dema)を運営している。大船怜はペンネーム。