インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜=ネット上の情報検証まとめ管理人)
(1)「子豚に虎の布を着せて鬱病の虎に育てさせたら元気になった」
日付
|
10/11 |
発信者
|
一般ユーザー |
媒体
|
拡散数
|
1.4万RT | |
内容
|
「早産で赤ちゃんを失った虎のお母さんが鬱病になって健康を害したので、子豚に虎の布を着せて、虎に育てさせたところ、虎は元気になったという。」などとする画像付きの投稿(削除済み)。 | ||
引用
|
※アカウント名等モザイク処理は筆者による(以下同様) |
【検証】うつ病とは無関係 虐待批判受け禁止に
この写真とストーリーは、元々2006年頃にアメリカ・カリフォルニア州の動物園でのものとして拡散。この時はアメリカのファクトチェックサイトSnopesが検証し、写真は実際にはタイの動物園で、うつ病治療とは関係無く単に客を楽しませる目的でブタと一緒に展示していると指摘している。
さらに、この展示は動物虐待との批判を受け、今年1月には動物保護当局の命令によって禁止されている。詳細はハフポストの検証記事を参照のこと。
(2)「芝生で遊ぶ子キリン(動画)」
日付
|
10/5 |
発信者
|
一般ユーザー |
媒体
|
拡散数
|
1700RT | |
内容
|
芝生の上に多数の小さなキリンがいるように見える動画。 | ||
引用
|
※アカウント名等モザイク処理は筆者による(以下同様) |
【検証】CGの可能性が高い
キリンは生まれたばかりの子供でも170cm程度あり(参考1、2)、撮影者など人間と比べた大きさのバランスがおかしいこと、キリンの影の向きが統一されていないことなどから、これはCG合成の可能性が高い。
この映像を最初に投稿したと見られるInstagramユーザーは、動物などをテーマにした明らかにCG合成と分かる映像を他に多数投稿していることから、キリンの映像もその一環と考えるのが自然であろう。
(3)「井口監督の達筆(画像)」
日付
|
10/8 |
発信者
|
一般ユーザー |
媒体
|
拡散数
|
6600RT | |
内容
|
プロ野球千葉ロッテマリーンズの公式打順表の画像とともに、「井口監督が達筆過ぎて仕事が手につかない。」とする投稿。 | ||
引用
|
【検証】書いたのはスタッフ
このメンバー表の画像は、元々朝日新聞ロッテ担当記者のTwitterアカウントが投稿したもの。それによればこれを書いたのは「ロッテのスタッフさん」であって、井口資仁監督本人ではない。(なお、井口監督の実際の筆跡はこちらから見ることができる。)
他球団でもマネージャー等が打順表を記入する例は見られ、監督以外が記入することはよく行われているようだ(参考1、2)。
(4)「学術会議メンバーが中心で科研費4兆円を再配分」
日付
|
10/12 |
発信者
|
渡邊哲也(経済評論家) |
媒体
|
ネット番組 |
拡散数
|
YouTubeで約4万回再生 |
内容
|
チャンネル桜のインターネット番組『Front Japan 桜』での、「これは(引用注:日本)学術会議のメンバーが中心となって科研費の再配分やっているわけですよ。学術会議の看板使って一種の圧力団体と化しているわけ。で、これで科研費ということになると4兆円とか、科研費がらみなんていうと6兆円とかですね。」とする発言。 |
【検証】科研費予算は2000億円台 学術会議
渡邊氏のこの発言部分を切り出した動画はTwitterでも転載され、約1500RTと広く拡散されている。
科学研究費(科研費)は、文科省の外郭団体である独立行政法人・日本学術振興会が所管する、学術研究への助成資金である。その予算は2020年度は2373億5000万円(参考:p.50)、近年は年間2000億円台で推移している(参考)。渡邊氏の述べた「4兆円」あるいは「6兆円」という数字は文科省全体の予算5.3兆円に匹敵する額で、実態とはかけ離れている。
日本学術振興会の業務運営に関しては、文科相が「日本学術会議と緊密な連絡を図る」と定められている(参考:第16条)。また、2004年度まで科研費の採択は学術会議の推薦に基づく委員が審査していた。しかし、現在では委員の任命方式が変更されるなどし、科研費の採択に学術会議が大きな力を持つことは無いという。詳細はハフポストによる検証記事を参照。
(5)「ポプラの綿毛は火災の原因になるため焼き払う」(再出)
日付
|
10/17 |
発信者
|
エピネシス(ニュースサイト) |
媒体
|
拡散数
|
3.1万RT | |
内容
|
海外ユーザーの投稿動画を引用し、「スペインの公園でポプラの綿毛を燃やしている様子。ポプラの綿毛は燃えやすく火災の原因にもなるため、このように焼き払う作業を行います。綿毛は瞬時に燃え尽きるため、芝生が燃える心配はありません。」とする投稿。 | ||
引用
|
【検証】意図的なものではない 5月にも拡散
これは5月に拡散されこの連載でも取り上げたのと同じ動画で、地元消防によれば火はコントロールされたものではなく、綿毛が出火するたびに消火に当たっているという。詳しくは下記記事の(5)を参照。
その他
FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。
また過去のまとめでも、新型コロナウイルス関連の様々な誤情報についても検証を紹介している。
※この記事の調査には、インファクトの西村晴子が協力した。
(この記事はInFact(運営:NPOニュースのタネ)からの転載です。過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年10月28日の予定です)
大船 怜(Ofuna Rei)
NPOメディア「InFact(運営:ニュースのタネ)」コレスポンデント
1986年千葉県出身。2011年3月東日本大震災をきっかけにネットの誤情報等の検証・注意喚起を行うTwitterアカウントを開設。現在派遣社員として一般企業に勤めながら「ネット上の情報検証まとめ」(@jishin_dema)を運営している。大船怜はペンネーム。