《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.10)【大船怜】


インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。

(1)「ベトナム人技能実習生が日本人上司に犬にされた」

日付
11/24
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
8400RT
内容

「ベトナム人技能実習生が日本人上司に犬にされてるんだけど…」とコメントされた、紐を付けられ四つん這いになって歩く人物とそれを引く人物を撮影した動画。

引用

アカウント名等モザイク処理は筆者による(以下同様)

【検証】映っていたのは日本人同士

この動画についてはフジテレビの「とくダネ!」やテレビ朝日の「モーニングショー」が取り上げた。両番組が関係者に取材したところによると、動画に映るのは「ベトナム人技能実習生」ではなく2人とも日本人で、撮影者がベトナム人実習生。2人は高校時代からの友人で、犬の真似は単なる罰ゲームだったという。

この主張をそのまま信用するかはともかくとして、少なくとも、犬の真似をしていたのが「ベトナム人」というのはツイート投稿者の勘違いが元と思われる。動画は元々Facebookでベトナム人と思われるアカウントが投稿したもの(現在は削除)の転載だが、Facebook投稿時にはベトナム語で

「Khi người nhật còn đối xừ với nhau như vậy đây. Thì đối vs ng Việt nam mình thì thế nào.(日本人同士でこんなことをやってる。ベトナム人に対してやったらどうなるでしょう)」

というコメントが付されていた(和訳は「モーニングショー」より)。これがFacebookの自動翻訳機能で「日本人がまだこんな風に接している時 ベトナム人はどうですか」と不完全に訳されていたため、文意が誤って伝わってしまったようだ。


(2)「のり弁のチクワが半分に 消費増税が影響か」

日付
12/1
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2500RT
内容

「生活が苦しくて、外出先では「ほっともっと」の「のり弁」(税込300円)を買って、公園のベンチで食べることがある俺。 しかし! きのう買ったら、チクワが半分に切られてるではないか!(怒 これ、10月の消費増税(&価格据え置き)が影響してるのか?チクワ天が好きだったから悔しい…(泣」という投稿。

引用

【検証】以前からちくわは半分

この投稿はれいわ新選組の元公認候補者・渡辺てる子氏がさらに「のり弁のちくわが半分に。消費税増税の悪影響です」と断定的なコメントとともに引用ツイートし、約700RTされた(現在は削除)。

詳細はBuzzFeedが検証しているが、言及されたほっともっとののり弁は以前から同じ大きさで、増税後に半分になったという事実は無い。2018年5月には中身を変えずに値下げもされている。

元の投稿者はその後「俺が食べてたのは『Bigのり弁』で、これは前からチクワ一本。これを食べてた時の印象が残ってたようだ。」と訂正。「BIGのり弁」は2016年3月の発売以来現在までちくわが一本で使用されている。


(3)「道交法改正 スマホを置いてナビとして使用も禁止」

日付
11/27
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
1.5万RT
内容

「車の免許持っている人 運転気をつけてよ 法律厳しくなっているよ」というコメントとともに投稿された「沖縄県警から道路交通法改正のお知らせ (スマホ使用等に関する罰則強化について)」と題した画像。

引用

画像部分拡大

【検証】禁止されているのは「通話」と「注視」

12月1日からの道交法改正は罰則の強化であって、罰則の対象となる行為が広がるわけではない。道交法で禁止されているのは運転者による携帯電話やカーナビ等の「通話」と「注視」(第71条5の5)。投稿に書かれた1~4のような行為は、「通話」や「注視」をしていなければそれだけでは違反に該当しない。5のような、運転者以外の人の行為も対象外だ。6のハンズフリーでの通話が違反にならないという点は間違っていない(神奈川県警のサイト参照)。

ジャーナリストの篠原修司氏の取材に対し、沖縄県警は出回っている画像は「県警として公式に出しているものではない」と回答したという。

今回の改正内容について詳細は政府広報沖縄県警のウェブサイトも参照のこと。


(4)「『はだしのゲン』13自治体に撤去要請」

日付
12/4
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
1.1万RT
内容

『はだしのゲン』東京など13自治体に撤去要請」というハフポストの記事を紹介する投稿。

引用

【検証】拡散したのは5年前の記事 撤去は既に撤回・却下

投稿ではこのハフポスト記事がいつのものか言及がなかったため、最近のニュースと勘違いする反応が多く見られたが、実際は2014年4月のものである。

ブログ「Timesteps」が一連の「はだしのゲン」閉架問題の経緯をまとめている。発端は2012年12月、松江市が市民陳情を受けて「ゲン」を閉架(完全な撤去ではなく、教師に申請のうえ閲覧できる状態)とする決定をしたこと。13年8月にこのことが報道され批判が起きたのを受け、市は閉架を撤回。冒頭のハフポスト記事は、その後の調査により、同様の要請が全国13の自治体と7の地方議会に寄せられていたことが判明したという内容だ。

ハフポストが参照したNHK報道にもある通り、いずれの自治体も閉架などの措置は取っていないとしている。


(5)「中村哲さん追悼式典 政府関係者の姿はなかった

日付
12/7
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
7100RT
内容

アフガニスタンで銃撃され亡くなった医師の中村哲氏の追悼式典について、「日本政府が航空機をチャーターして、中村さんを迎えにに行けばよかったのに、日本政府は最後まで無視しましたね。 アフガニスタンの空港には、政府関係者の姿はなかった…」という投稿。

引用

【検証】駐アフガニスタン大使らが参列

アフガニスタンのカブール国際空港で開かれた追悼式典には、実際には鈴鹿光次・駐アフガニスタン特命全権大使を始め、大使館や外務省のスタッフも参列していた。詳しくは、BuzzFeedのファクトチェック記事を参照。


(6)「犯人を見分けて銃で撃つロボット」(再出)

日付
12/2
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2.6万RT
内容

人型のロボットが人質と犯人に見立てた人形を見分け、犯人に銃を撃つという内容の動画の投稿。

引用

【検証】10月にも拡散したCG動画

ジャーナリストの岩上安身氏も、この投稿を引用し「これが特撮ではなくて、リアルなのだとしたら(すぐにリアルと飲み込めなくて)、戦争も戦闘も戦闘未満の銃撃戦(市街地でのテロリスト等の制圧)も、全部、ロボット任せにできることになる。」などとコメントしていた

しかし、これは10月に拡散されこの連載でも取り上げたのと同じ動画で、あくまでCG作品である。詳しくは下記記事の(2)を参照。

(この記事はニュースのタネからの転載です。過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2019年12月18日の予定です)

著者紹介

大船 怜(Ofuna Rei)

NPOメディア「ニュースのタネ」編集委員
1986年千葉県出身。2011年3月東日本大震災をきっかけにネットの誤情報等の検証・注意喚起を行うTwitterアカウントを開設。現在派遣社員として一般企業に勤めながら「ネット上の情報検証まとめ」(@jishin_dema)を運営している。大船怜はペンネーム。