ファクトチェックアワード2025


ファクトチェックアワード2025

偽・誤情報が民主主義を脅かす問題となっています。人々がそうした情報に惑わされにくい社会を築くために、ファクトチェックの推進・普及に取り組んできた当法人は、社会的関心の高い事柄に関して人々を誤解させるおそれのある情報を検証し、正確な事実の共有に貢献した作品を顕彰しその社会的意義を広めるため、2023年にこの賞を設けました。今回は3回目の開催となります。

審査・選考は、外部の視点を取り入れ公正に行うことを重視し、外部の学識経験者3名およびFIJ理事2名(ファクトチェックの実践活動に関与している理事を除く)の委員により実施しました。

(2025年7月10日発表)

参考情報
応募要項・選考基準等について
ファクトチェックアワード2024

選考結果
ファクトチェックアワード2025 大賞

イスラエル人襲撃事件 ロイター配信動画はミスリード 国内外の多数メディアが追従【リトマス】

(授賞理由)
本作品は、ロイター通信社が配信した記事に対し、事実関係を徹底的に検証し、配信内容が実際の状況を正確に伝えていない「ミスリード」であることを明らかにしました。その検証は、各国メディアによる報道内容に加え、元動画や別の角度の映像など、多角的な証拠を丹念に突き合わせており、ファクトチェックの手法として高く評価されます。また、国内の報道機関への直接取材が、記事や動画の説明の訂正・削除などの対応に繋がっており、正確な情報の流通に寄与したことから、大賞にふさわしいとの評価となりました。(宮崎委員)

(受賞作)
イスラエル人襲撃事件 ロイター配信動画はミスリード 国内外の多数メディアが追従 (リトマス 2024年11月28日掲載)

ファクトチェックアワード2025 優秀賞
(3作品、応募順)

自民・小林鷹之議員「再稼働が進んでいるか否かで、電気料金に東西の格差が生じている」は正しいのか?【InFact】

(授賞理由)
昨年、総裁選に立候補した小林議員は「コバホーク」としての注目度も高く、その発言も影響力があります。電気料金に東西の格差はあるのか、あるとすれば、それは原発の再稼働による差なのか。記事では、言説の真偽確認だけでなく、電気料金には、福島第一原発事故における損害賠償金や原発を円滑に廃炉にする費用等の原発関連費が上乗せされ、もとより原発ありきの構成になっていることが、筆者が作成した表をもとに丁寧に説明されています。原発再稼働の問題は国民の重要な関心事です。電気料金の仕組みから電気料金と原発の再稼働の関係を根拠を示しながら論じた本記事は説得力があり、評価できます。(高橋委員)

(受賞作)
自民・小林鷹之議員「再稼働が進んでいるか否かで、電気料金に東西の格差が生じている」は正しいのか?(上)
自民・小林鷹之議員「再稼働が進んでいるか否かで、電気料金に東西の格差が生じている」は正しいのか?(下)

【InFact:2025年2月2日/3月2日】

「高血圧の基準が変わった」は誤り 診断基準値に変更なし【リトマス】

(授賞理由)
「高血圧」を自認する人々は多く、その点で、検証対象となったSNS上の言説は広まりやすく、誤った行動変容に広く結びつくことが懸念されます。その点で、本記事のようなていねいな検証はきわめて意義が高いものと評価しました。同時に、医療機関や医師の解説も、時に当てにならないという指摘も、残念ながら重要な教訓です。このように、専門知識が問われるような分野ながら、ていねいに資料確認などを重ねていることが記事から伝わり高い信頼感を得ることができました。(藤村委員)

(受賞作)
「高血圧の基準が変わった」は誤り 診断基準値に変更なし 【リトマス:2024年6月22日】

兵庫県知事選 稲村氏が当選すると外国人の地方参政権が成立する?公約になく、本人も否定【日本ファクトチェックセンター】

(授賞理由)
兵庫県知事選では、選挙期間中に主要メディアが候補者の問題に関する報道を自粛し、有権者が知りたい情報が報道されない「報道の空白」が生じたことが、さまざまな偽・誤情報が拡散した理由の1つと指摘されています。
この記事は、選挙期間中にX(旧Twitter)で拡散した「稲村氏当選で外国人の地方参政権が成立する」との言説をファクトチェックし、稲村候補自身のWebサイトなどと照合することで、当該情報が「誤り」であると明確に判定結果を示しています。
選挙期間中も偽情報の流布を看過しない姿勢を示し、「報道の空白」をある程度埋める役割を果たした点が評価されました。(小笠原委員長)

(受賞作)
兵庫県知事選 稲村氏が当選すると外国人の地方参政権が成立する?公約になく、本人も否定 【日本ファクトチェックセンター:2024年11月11日】

ファクトチェックアワード2025 特別賞(1作品)

「赤いきつね」CM炎上、1%の批判から連鎖 SNS投稿分析【TDAI Lab】

 


(授賞理由)
SNS炎上を一般論で語るのではなく、LLMによる自然言語分析を駆使して可視化・分類し、批判はわずか1%にすぎず、反論の連鎖が炎上を拡大させた構図を客観的に示した点を高く評価します。仮想敵の生成と議論の変質というSNS特有の構造にも踏み込み、現代の情報環境を読み解くうえで示唆に富みます。ファクトチェックとは異なるが、その検証的姿勢は今後の方法論としての可能性も感じさせる論考です。(脇浜委員)

(受賞作)
「赤いきつね」CM炎上、1%の批判から連鎖 SNS投稿分析 【TDAI Lab(日本経済新聞への寄稿):2025年3月22日】

総評(小笠原選考委員長)
 今年のファクトチェックアワード2025には、ソーシャルメディア上の言説や国際的通信社の報道の検証、ネット炎上の内容分析まで、多彩な検証対象・検証手法の記事が寄せられました。このことは偽・誤情報の問題の多様化と、ファクトチェックをはじめとする信憑性の高い情報へのニーズの高まりを反映しているとも考えられます。従来のメディア報道の弱点を補うようなファクトチェック記事も見られました。
 「ファクトチェック」の言葉をメディアなどで見聞きする機会は増えましたが、ファクトチェックと取材の違いや社会的意義などの理解の広がりは十分ではありません。ファクトチェックアワードでは、今後も優れたファクトチェックの取り組みを取り上げて共有することで、ファクトチェックへの関心と理解を促し、ひいては偽・誤情報に対する社会の抵抗力を高めていきたいと考えます。

応募状況

応募総数 22件

たくさんの作品をご応募いただき、ありがとうございました。

選考委員
小笠原 盛浩
選考委員長
東洋大学教授
高橋 恭子
早稲田大学教授
宮崎 洋子
クレアブ株式会社ディレクター
藤村 厚夫FIJ副理事長
スマートニュース(株)フェロー
脇浜 紀子FIJ理事
京都産業大学教授