ファクトチェックとは

 ファクトチェックとは、社会に広がっている情報・ニュースや言説が、事実に基づいているかどうかを調べて、正確な情報を人々と共有する、とてもシンプルな営みです。一言で言えば、言説・情報の「真偽検証」といえます。

 世の中に影響を与える言説や情報のうち、真偽が必ずしも定かでないものや正確さに疑いがあるものが、ファクトチェックの対象となります。ニュース記事、インターネット上の情報はもとより、政治家や有識者など社会的影響力をもった人物の言説も対象となります。(『ファクトチェックとは何か』(岩波ブックレット)第1章より)

 FIJのガイドラインでは、次のように定義しています。

公開された言説のうち、客観的に検証可能な事実について言及した事項に限定して真実性・正確性を検証し、その結果を発表する営み

 

【ファクトチェックの3要素】

 ファクトチェックという営みは、基本的に次の3つの要素から成り立っています。この3つの特徴を備え、一般の読者にわかりやすく記事化したものを「ファクトチェック記事」といいます。
 ① 対象言説の特定・選択
 (ファクトチェックの対象とすべき言説・情報を選び出す作業です。基本的に公開の場で発せられた言説であり、第三者が確認できるものが対象になります。)
 ② 事実や証拠(エビデンス)の調査
 (その言説の真偽を検証するために必要な事実関係の調査・取材です。単に証言ではなく、第三者が確認できる証拠を見つけ出すことも含まれます。そうしたエビデンスをファクトチェック記事で提示することが重要となります。)
 ③ 対象言説の真偽・正確性についての判定
 (事実調査の結果を踏まえて、対象言説について「正確」か「不正確」か、「ミスリード」か、といった判定を行うことになります。この判定は一定の基準を用いることが一般的です。ただし、ファクトチェックの中には、こうした判定を行わず、事実調査の結論を示すだけのものもあり、それでもよいとされています。)
 

【事実と意見の区別】

 ファクトチェックは、あくまで「事実」についての検証に限定した営みですから、事実(ファクト)と意見(オピニオン)の区別が極めて重要になります。
 事実とは、何らかの証拠によって検証、確認が可能な事柄をいいます。
 次の文章を見てみましょう。『理科系の作文技術』(木下是雄、中公新書)で用いられている例です。
 (1) ジョージ・ワシントンは米国の最も偉大な大統領であった。
 (2) ジョージ・ワシントンは米国の初代の大統領であった。

 (2)は、実際に初代の大統領であったかどうかを資料を調べることで確認できるので、事実について述べた言説(事実言明)です。これに対して(1)は、「最も偉大な」大統領かどうかはその人の見解、主張であって、立場によって見方が分かれる問題ですので、「米国の大統領であった」という点を除けば、意見について述べた言説です。
 ファクトチェックの対象は、原則として、こうした事実言明だけに限られます。事実と意見が混じっているような言説も、あくまで前提となる事実の部分だけ検証を行います。
 他方、「私は、あの人の話し方は傲慢だと思う」というように、事実について全く触れていない単なる意見は、検証の対象になりません。立場によって見方が分かれる意見・評価・論評などは、ファクトチェックの対象にならないのです。
 

【検証の方法・可能性】

 事実言明は、理論上証拠があれば真偽の検証が可能なものですが、実際上は検証困難または不可能なものもあります。たとえば、「ある人がこのように発言した」という文章は、事実について述べた言説(事実言明)ですが、その人の発言を録音したもの(証拠)が実際に見つからなければ、そのような発言があったかどうかの事実を確定させることは非常に困難となります。その発言を聞いたという人の証言をもとに推定(推認)できたとしても、録音がある場合より不確実な事実認定となります。
 ですから、ファクトチェックは、原則として調査によって収集・入手できる証拠(公開情報や客観情報)に基づいて、実際に検証できる「事実言明」を扱うことが多いといえます。もちろん一般公開されていないものの、情報公開請求などによって入手した証拠も、ファクトチェックで使うことができます。
 

【非党派性・公平性】

 これと同様に大事なことですが、ファクトチェックを行う人は、予断をもたずに、公平に、事実かどうかの検証に徹することが求められます。自分の意見や感情、主張などをいったん脇に置いておく必要があります。特定の主義・主張や党派・集団等を擁護したい、あるいは批判する目的の道具として、ファクトチェックを行うべきではありません。
 これは、国際的なファクトチェック活動における最も重要な原則とされています(詳しくはIFCNファクトチェック綱領参照)。
 
参考記事
◉ 「事実」が軽んじられる現代にこそ必要な「ファクトチェック」とは? (週プレNEWS 2018/7/21)
 
参考文献
◉ ファクトチェックとは何か (岩波ブックレット、2018年4月。立岩陽一郎・FIJ副理事長と楊井人文事務局長の共著)